ニューヨーク特派員報告
第200回

アメリカの庶民的食堂


おっと今回は記念すべき200回目!\(^_^)/。ですが、あえてさりげなく超ベタな話題でいってみるのもクールかも!!いうことで、ズバリ食文化シリーズで行ってみよう。アメリカにあって日本にないダイナーについて書いてみる。その頼もしい庶民の味方でもあるそのアメリカの食堂は僕がよく(いまも)これをしたためている場所でもある。聞いたことありますかー?dinnerではなく、diner!そこは一見、日本のスカイラークやロイヤルホストなどのファミレスに似た感じだけど、内容はかなり違うのだ。

どう違うのか?まず顕著なのはその食のポーションであろう。冷凍で決められた量の、できあいのものを温めただけのファミレスと違い、大体はその場で(安価な食材を使って)ざっくりと料理されたものがアメリカンサイズでサーブされる。つまりドカ盛りなのだ。ファミレスの倍以上あると考えて差し支えない。一般的日本人なら2人で一皿をシェアしてちょうどいいくらいの量である。

そして、そのシグネイチャー・ディッシュはハンバーガーだ。本場アメリカは、どこのダイナーにいってもハズレははい。分厚く肉汁たっぷりのハンバーグは、だいたい手作りである。マクドの2倍くらいあるパンにレタスとトマトを挟んで食べるのだが、顎が外れるくらい大きく口を開けなければパクつけないので、ナイフとフォークでバラして食べることの方が多い。サイドに巨大なピクルスとコールスローがついてきて、デラックスはてんこ盛りのフライドポテトが付いてくる。大体それで10ドル前後。こっちでラーメンの平均価格が13ドルくらいなのに対して考えるとなんともお得感がある。栄養価も高く、そして、お腹もいっぱいになる。

朝食のオムレツもダイナーならではの醍醐味がある。オニオンやベーコンの入ったカントリースタイル、モッツァレラの入ったイタリアンからスモークサーモンの入ったノバスコシアなものまでバリエーションも豊富で、だいたい3つ卵を使っている。中に入れるチーズの種類も色々ある。それに、コーヒーがついてきて、トーストやポテトは種類や調理方法も選べる。もちろんコーヒーはお変わり自由でだいたい10ドル前後である。時間に余裕があって、がっつり朝食を食べたいときにはうってつけだ。

深夜のデートにもダイナーは使える。ちょっと郊外のダイナーは駐車場も完備。あと(これは僕がダイナーを好むもう一つの理由なのだが)店内にほとんど音楽が流れていない。たまにブースにプライベートなジュークボックスが設置されていたりもするが、利用している人を見たことはない。通常モードでフツーな話ができる環境なのである。その辺りは日本の昔の喫茶店的でもある。ただ大きな違いはそこにあるケーキのサイズである。これもまた巨大で砂糖も倍以上は使用されているであろう。甘さ抑えめのチーズケーキを頼むことが多いが、未だそのケーキをひとりで1個完食したことはない。二人で1個がちょうどいい。それにノンカフェインのコーヒーとハーブティーをオーダーしても2人で10ドル以下という驚きのプライスなのだ!

ライティングをする時もダイナーはうってつけの環境である。ランチタイムを除いてどこも空席たっぷりで、サーバーも放っておいてくれるので、何時間いても問題ない。周りのざわつきも程よく、考え事や書き物に集中することができる。ちょっと目を覚ましたかったらコーヒーのお代わりをすればいい。さりげなく周りの会話に耳を傾け、それをネタにするのもいいだろう。僕はよく、ランチを食べながらこれを書くことが多い。陽の当たらないアパートより、燦々と日の当たるテーブルで、道ゆく人々を眺めながらだと、頭の回転もスムースになる。閉ざされた自宅と違い、ここで移り行く日常の変化を直に感じることができることが、ポジティブな刺激となっているのかもしれない。

ダイナーはアメリカ映画のワンシーンとしてよく出てくるから、日本の皆様にもお馴染みかもしれない。80年代にヒットしたスザンヌ・ヴェガの『トムズ・ダイナー』というアカペラの曲がその風景を詩的に歌い上げている。今もあるアッパーウエストのダイナーを舞台にしたその歌詞には、ひとり店内に座り、それぞれの客のやりとりやそれに対する彼女のリアクションが描き出されている。その風景に透ける都会で暮らすセンチメンタルな表現は、「お得感」を強調する僕の視点と対照的であるが、今も変わらないニューヨークの日常を感じる。

モクノアキオ は主に電子音響系を中心とする音楽家。コロンビア大学でイベント関係の仕事をしながら、様々な分野とのコラボやノイズバンドなどでも活動している。7月29日に矢場町のSpazio-Ritaで99 Hookerと共にスポークン・ワードと映像のコラボで来日ライブやります!!

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