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この日は、前身バンドでは「死ね死ね団」を名乗っていた事もある人間椅子と、元祖「死ね死ね団」の「赤い夕陽が校舎を染めて、お前の額に釘を打つ」と銘打った、ツーマンライブ。長い年月を経て不思議な縁のこの2バンドの対バンが実現したわけだが、これはもう普段見てきたライブとは違う、異彩を放ったものになるに違いないと感じていた。バンド名、写真、メンバー名、その他諸々の情報・・・。期待とある種の不安を抱き開演時刻を迎えた。
今回は、人間椅子のライブレポートの為、残念ながら死ね死ね団は割愛させて頂くが、それはもう全てが衝(笑?)撃的なライブで一見の価値があるバンドなので、機会があれば是非ご覧いただきたい。

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死ね死ね団がステージを後にし、出てきたのはリーゼント、普段着?、そして白塗りの住職!当たり前のように強烈な歓声で迎えるオーディエンス。しかし、初体験の私は目を疑う。だが1曲目の「幻色の孤島」が始まると、そんなことを深く考える間もなく「人間椅子ワールド」に引きずり込まれた。猟奇的な楽曲、恐怖を誘うコーラス、そしてそれにマッチした、和嶋氏の狂言を思わせるかのようなボーカル・・・。この日、私は本物の「世界観を持つバンド」に出会った。今まで、世界観を持っていると思っていたバンドは、全て本物には遠く及ばないものであった。

恐怖を感じながらもステージから目を離せずにいると、すぐに2曲目に入る。これがまた怖い!ベースである鈴木氏がボーカルを執る「鬼」という楽曲であるが、鈴木氏の歌声、笑い声、叫び声が全て狂気がかっており、大げさでなく憑(と)り殺されるのではないかと錯覚した。しかし目が離せない、耳を塞げない!まるで禁断の果実を食べてしまったかのように、人間椅子の繰り出す世界に身を委ねてしまう。

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2曲目を終えたところで、8/8に発売されるニューアルバム「真夏の夜の夢」の話を中心としたMCに入る。私は、「MCに入ってくれてよかった。殺されるかと思った」と本気で感じていた。人間椅子初体験の私にとっては、それほどまでに強烈だったということだ。

しかし、中盤に差し掛かりこの流れがガラッと変わる。きっかけは、高校の学際で演奏したという、「死ね死ね団のテーマ」からであった。和嶋氏が高校時代に作った曲らしく、後の人間椅子の要素は感じさせつつも、やはりどこか若さを感じさせる楽曲であり、鈴木氏の「ギター、3年5組和嶋君!」という掛け声からギターソロが始まる部分など、メンバーがとても懐かしんで演っていたように見えた。このようなレアな曲に出会える可能性があるのも、このようなある種特殊なイベントの良いところである。

ここでMCに入ったのだが、このMCでドラムのナカジマ氏にスポットライトが当たる。学生時代ラウドネスのカバーバンドをやっていたこと、その際のステージネームが“ドラゴン”であることが発覚し、続く曲「道程」では、ナカジマ“ドラゴン”ノブ氏の咆哮により曲が始まる。ナカジマ氏の声質も手伝ってか、私の持つ人間椅子のイメージを覆す、ストレートなロックンロールを届けてくれた。

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そのままの流れを保ちつつ8曲目を終え、本編ラストの「発射」が始まると、待ってました!人間椅子ワールドが再び発動!一瞬で空気を変える表現力は、さすがの一言に尽きる。「10、9,8,7、・・・発射!」という部分では、この世の全てをぶち壊す、物理的にだけではなく精神的にもぶっ壊れてしまいそうな、鬼気迫るものを感じた曲だった。

イメージ本編が終り、ステージからメンバーが去ると同時に聞こえるアンコールの声。誰一人としてその場を離れることなく、ひたすら人間椅子に声を送り続ける。みんなまだまだ世界に浸っていたいのだ。
少しの間をおき、アンコールの声に応え再びメンバーが登場する。和嶋氏とナカジマ氏は、人間椅子のTシャツ(通称イスT)を着て登場。しかし鈴木氏は・・・何と白装束!白装束に白塗りの住職は、更に強烈で興奮に胸が高鳴った。和嶋氏の、「暑いから着替えた方がいいですね」という、非常に控えめではあったが、イスTのPRを挟み、アンコールへ入る。
「天国に結ぶ恋」という曲では、オーディエンスは待ちわびていたように、頭を振る。振りまくる。ステージ側からの強烈な演奏に、オーディエンスは全力を出し切って応えるという、双方の感情がひしひしと伝わってくる素晴らしいアンコール2曲が終り、終演を迎えた。

しかし、ここでまたアンコールの声。客電が点いただけでは声は鳴り止まず、場内にBGMが鳴り出すと、ようやく声が治まった。あきらめて帰る方々の顔を見ていると、すっきりしない顔をしている。期待ハズレ?消化不良?いやいや、あの顔は「早く次のライブを見たい」という名残惜しい顔だった。今日のお客さんは、間違いなく9/16のワンマンライブに足を運ぶだろう。まだ人間椅子を未体験の方、現代からトリップして別世界に身を委ねて見たい方・・・ワンマンライブ必見です!!


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