TNR |
トランプのとんでもない大統領令の所為でスッチャカメッチャカになっているアメリカ。予想通りのやりたい放題をニュースでみると、気分が落ち込み平穏にすごせない。とりあえず、そんな話は感情的になってしまうので、今回横において、最近、ご近所であった話でも。 1年ほどまえから、ワンブロック離れた坂通りに住んでいる2匹のニャンコに会いに行っているという記事を前に書いたことがあるが、実はまだ、たまにいっている。クリスマス前には、寒い冬を乗り越えられるように分厚い発泡スチロールのシェルターをプレゼントしてあげた。僕以外にも数人が面倒をみてあげているみたいで、誰かに飼われているという話も聞いたことがある。 この間、そのネコ達に餌をあげていたら、坂の下から来たロシア系のベラという女性に声をかけられた。ベラも良く餌をあげに来るという。彼女は、その近所にいる他のネコ達のこともきにしているらしい。そこで、TNRの話がでてきた。TNRとは、トラップ、ニューター、リターンの略語で、捕まえて去勢して元の場所に戻すという意味である。野良達が繁殖しまくって、不幸なネコ生をおくりより、今いる猫をできるだけちゃんと生活できるよう手助けをすることである。 僕はTNRの考えに賛成だし、猫好きなので手助けをすることにした。捕らえた猫を施設に連れて行く前と手術後に傷が癒えるまでの間、一時的にアパートで預かる役目である。ベラに電話番号を教えたら、一気にいろんな人たちから連絡が来るようになった。レスキューやら、一時的に預かることなどの相談などである。先週、2匹預かることになって、5ブロック向こうに住んでいるリタとブロンクス動物園の近所にすんでいるミッシェルが連れてきた。一匹はまだ元気な盛りのオスのモハメッド。家にあるものすべてを珍しそうに眺めている。 この2週間で、猫を通じて急にたくさんのご近所さんと知り合いになった。ミッシェルはまだ若いドミニカンで、大学を休学してまでTNRに専念しているという。ブロンクス動物園辺りにいる30匹あまりの野良猫をすべてレスキューしようと考えているらしい。リタは、瓶底めがねをかけているおばあさんで、しょっちゅう電話してくる。昨夜はシュリンという4ブロック先にすんでいる女性が子猫をもってやってきた。彼女は、キャブ・ドライバーでもある。 オリヴェロスはモートン・スボトニックとともに、サンフランシスコ・テープ・センターというアメリカの電子音楽の歴史において重要な意味を持つ場の創立者であり、そこでテクノロジーを介して、音を聴くことについて新しい解釈を発見した。「聴く」ということから生まれる創造の可能性を徹底して追求し、それを音楽に反映してきたオリヴェロスに学ぶことはまだまだありそうだ。 子供の頃、友達達と拾った野良の子をもって、貰ってくれる家を探して回ったことを思い出す。家はペット禁止の社宅だったので、無理だった。その反動だろうか。その後も何度か猫と暮らすこともあり、今は猫の扱いがましになった。ご近所のTNR軍団も、本当に猫がすきらしく、ちょくちょく様子を伺う連絡がくる。ネットワークもしっかりしていて、ずっと仲良くしていた坂の猫(ママとスカーというらしい)は、すでに担当者がいるので、餌をやらなくて良いということになった。 寒さも厳しく外敵も多いストリートから、部屋の中に入ってきた時の子猫の幸せそうな顔をみると、こっちも嬉しくなってしまう。野生の動物とは違い、ペットとしてきた猫は、人間の助けなしには生は全うできない。野良猫の問題は、そもそも人間の作った問題。だから、人間がなんとかするべきであると思う。保健所が殺処分する前に、繁殖を食い止めるほうが倫理的なのである。 排他的で人種差別の匂いのプンプンする連中にホワイトハウスを乗っ取られてしまい、マイノリティーに居心地の悪さを感じさせるニュースが多い昨今。僕の暮らすブロンクスは、移民ばかりで安心する。そんなご近所でTNR仲間ができたことは、なんか嬉しいのだ。 もくのあきおは、作曲家・ノイジシャン。主に電子音響音楽を専門にしていている。毎月、第2月曜Max Fishでおこなわれるノイズイベントで音響も担当。 |
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